1979年にクレドール(セイコー傘下)が製造したジェラルド・ジェンタデザインの“クレドール ロコモティブ”を再発売する。

クレドール ロコモティブが1970年代のジェラルド・ジェンタによる“ブレスレット一体型”のラグジュアリースポーツウォッチであることは疑いようがない。そのデザインには、アイコニックなデザイナー(そして彼のアイコニックなデザイン)から学んだ多くの特徴が見られる。角ばったブレスレット、ベゼルのビス、そして独特なベゼルと文字盤の形状は、すべて70年代のジェンタを象徴している。しかし、彼のスイス業界への影響が伝説的である一方で、セイコーや日本全体がジェンタにとってどれほど重要であったか、知っている人は少ないだろう。この点を踏まえると、これが伝統的な紹介になることはないが、それが適切だと思う。ジェラルド・ジェンタのデザインには(ポーラルーターを除いて)伝統的なものは何もない。いまから新しい時計を紹介するので、最後のスペックまで飛ばしてもらっても構わない。しかしもっと知りたい人にとって、ロコモティブの歴史を掘り下げることは十分に価値があると思う。

新しいクレドール ロコモティブ
“ブレスレット一体型”という言葉を引用符で囲んでいるのは、ご覧のとおり、ブレスレットがケースに統合されている度合いがその後に登場した3つのデザイン(ロイヤル オーク、ノーチラス、インヂュニア)よりもはるかに少ないからだ。これらほかのデザインについても、当時画期的であったとはいえ、現代のスポーツウォッチの伝統的な型には確実に当てはまらないことが分かってきた。しかしクレドール ロコモティブのポイントはそこではない。この時計は何よりもまず、金属の形をした歴史の教科書なのだ。

Credor Locomotive
まず、その金属の形について話そう。オリジナルのロコモティブはスティール製であったが、新モデルは高輝度チタンでつくられており、サイズは38.8mm×8.9mm、ソリッドケースバック、ねじ込み式リューズ、反射防止コーティングを施したサファイアクリスタルを備え、10気圧の防水性能を誇る。ケース自体には、それまでの時計の要素がミックスされている(例えばIWC インヂュニアに似ているといえるかもしれない)。特にブレスレットは最も明白な“回帰”であり、サテン仕上げの表面、アングルとポリッシュ仕上げのエッジ、各リンク間のふたつのコネクターなど、ロイヤル オークとの類似性を否定することはできない。さらにケースと完全に一体化しているのではなく、カルティエ スーパーコピーNランク代金引換専門店時計は中央の1点でつながっている。これについては後ほど詳しく説明しよう。ブレスレットはプッシュボタン式のふたつ折りフォールドクラスプを採用している。

Credor Locomotive
 文字盤には六角形のベゼルがあり、それを六角形のネジが固定している。ベゼルの上部はサテン仕上げ、側面はポリッシュ仕上げで、ロイヤル オークと似ているが、ロイヤル オークが非常に鋭く計算されたエッジを持つのに対し、クレドールのケース形状はより柔らかく丸みを帯びている。オリジナルのクレドール ロコモティブの文字盤は、ジェンタのオリジナルスケッチの放射状パターンよりも、むしろハンマーで叩いたようなテクスチャーを持っていた。それがいまでは、新しい機械加工と製造技術によって、1600本以上の放射状パターンが加えられている。またベゼルのネジが機能的になり、文字盤のインデックスが完全な楕円形になったことも、オリジナルのロコモティブが発表されてから45年のあいだに行われたアップデートの一部である。

Credor Locomotive
 ケース内部には、時・分・センターセコンド、日付表示を備えた新しい自動巻きCal.CR01が搭載されている。これはオリジナルのクォーツムーブメントからさらにアップグレードしたものだ。時計は2万8800振動/時で動作し、パワーリザーブは約45時間。残念ながら、私が撮影したモデルはムーブメントなしのダミー機であったため、感触や性能については何もお伝えできない。2024年版のクレドール ロコモティブは300本のみの限定生産で、今年の8月に正式販売される際には176万円(税込)で販売される予定である。これが主な詳細であるが、クレドール ロコモティブの物語の表面をかすめたに過ぎない。

クレドール入門
A Week On The Wrist: The Credor Eichi II

クレドール 叡智IIは、この過去の記事で述べたように“最も偉大なグランドセイコー”として知られているかもしれないが、それは少し複雑である。それでもこの時計は素晴らしく、祝うに値し、さらに探求する価値がある。

最近、私が書いたグランドセイコー Kodo “薄明”に対するコメントで、クレドールはセイコーの最高価格モデルのブランドではないかという質問があった。これはよくある誤解である。その一因は、クレドールはアメリカではほぼ叡智IIしか知られていないことにある。叡智IIはクレドールのマスターピースコレクションのひとつであり、ほとんどのグランドセイコーの時計よりも高価(税込で605万円)だからである。実際、今日まで叡智IIはアメリカで販売されている唯一のクレドールであった。

フランス語の“CRÊTE D’OR”(黄金の頂き)に由来するクレドールは、1974年に貴金属を使用したセイコーの高級ブランドとして設立された。1980年までに、ブランドはトライピークの紋章ロゴとクレドールの名前を初めてセイコーブランドロゴなしで配置し、その2年後には価格が100万ドルを超えるダイヤモンドセットのジュエリーウォッチを発表した。2011年にはスプリングドライブ ミニッツリピーターも発売された。しかし、クレドールの歴史を通じて最も重要なのは、ほかのセイコーブランドやコレクションでは見られない手工芸、宝石セット、デザイン、形状の実験を行っている点である。クレドールはまた、価格帯の幅も大きく跨いでいる。

Time + Tideの提供による、クレドールのセレクション。

グランドセイコーの9つのデザイン要素。Courtesy of Grand Seiko.

グランドセイコーとクレドールを差別化する要素は、実は価格とは関係ない。セイコーとグランドセイコーはデザインや価格帯が重なる部分があるが、クレドールの最大の差別化要因は、グランドセイコーの核となる3つのデザイン原則と、すべての時計に共通する9つのデザイン要素の制約から解放されている点である。ブランドのウェブサイトにはこれらの原則の概要が掲載されており、グランドセイコーのすべての時計には以下の要素が備わっているはずである(サイトからの引用)

平面を主体として、平面と二次曲面からなるデザイン。三次曲面は原則として採り入れない。
ケース・ダイヤル・針のすべてにわたって極力平面部の面積を多くする。
各面は原則として鏡面とし、その鏡面からは極力歪みをなくす。
この図は、これらすべてがどのようにグランドセイコーの9つのデザイン要素に分解されるかを示したものだ。しかしロコモティブを見ると、これらのデザイン要素の多くが、現代のグランドセイコーの要求とは大きく異なることが分かる。

それを踏まえると、ロコモティブが現代のグランドセイコーで受け入れられるデザインから明らかに異なっていることが分かる。四角ではなく丸みを帯びたインデックス、面取りされていない針、ケースが上から下、さらには角から角まで立体的なカーブを描いていることなど、どれも“グランドセイコー”のデザインとはいえない特徴である。さらに鏡面仕上げではなく縦方向のサテンで仕上げられたベゼル自体も、この時計をクレドール(少なくともグランドセイコーではない)として際立たせている。

Credor Locomotive
その点については納得できる。ジェラルド・ジェンタはほかの誰のデザインルールにも従わなかったからだ。それが彼のデザインをひと目で識別できる理由である。しかし、多くのジェンタのデザインにまつわる逸話とは異なり、この話は彼自身が直接語ったものである。

ジェンタと日本。ロコモティブ誕生の経緯
数週間前のある月曜日の遅い時間、クレドール ロコモティブの再発売を前に、イヴリン・ジェンタ夫人と話をした。“ジェラルド・ジェンタ・ヘリテージ・アソシエーション”の創設者でもある彼女はロンドンを拠点としながらも、故ジェラルド・ジェンタへの敬意を表するとともに新しい若手の才能を支援するために活動している。彼女は東京・銀座にあるセイコーの重厚なウッドパネルの部屋からテレビ会議に出席していた。イヴリン夫人が夫の芸術、デザインへの情熱、そして日本への愛について雄弁に語るなかで、私はジェラルド・ジェンタの天才性と、彼がキャリアで直面した挑戦や外部からの圧力、特にセイコーと仕事をする決断に至る経緯をより深く理解するようになった。

Gerald Genta and Evelyne Genta
ジェラルド・ジェンタとイヴリン・ジェンタ夫人。Photo courtesy Gerald Genta Heritage.

 過去20年間、スイスの独立時計産業を支えてきた日本の役割は、フィリップ・デュフォーやF.P.ジュルヌのような人々を新たな高みへと引き上げた。彼らは日本の支援がなければ(少なくともそれほど早くは)その高みに到達しなかったかもしれない。しかし、1970年代にはスイスの時計産業が日本と戦争状態にあった。日本が機械式およびクォーツ式の精度で成長しているため、機械式時計製造の魂を巡る争いが起きたのである。

「もしあなたがスイス人男性で、スイスブランドのデザインを手がける時計の世界で人生をスタートさせたとしたら、日本は絶対に好きになってはいけない場所だった。なぜなら、スイスのあらゆる産業が日本を恐れていたからです」とイヴリン・ジェンタ夫人は私に語った。「日本はスイスの時計産業を滅ぼす大敵でした。工場は閉鎖され、人々は解雇されていきました。それとは逆に私の夫は日本に執着しており、最初は本当に観光客として何度も訪れていました」

 ジェンタは旅の途中で、セイコー創業家の一員であった服部禮次郎と出会った。ジェンタは日本語も英語も話せず、服部もフランス語を話せなかったが、ふたりは瞬く間に意気投合し、強い友情で結ばれた。服部はジェンタの作品を称賛し、1970年代には何度もジェンタを日本に招いてセイコーのデザインチームに向けてインスピレーションを与える講演を行った。そこで、余暇には常に絵を描いていた情熱的なアーティストであるジェンタは、最近のグランドセイコーに共通するテーマである自然からインスピレーションを得ること、そしてスイスの時計産業についてあまり考えないようにすることをデザイナーたちにすすめた。

「彼はスイス人として時計をつくっていましたが、彼にとってそれは応用芸術でした」とイヴリン・ジェンタ夫人は夫について語った。「彼は非常に強いこだわりがあり、ほかの時計には見向きもしませんでした。バーゼルフェアに行っても、私がほかのブランドのウィンドウを見て回っているあいだ、彼は決して見に行かなかった。私はそれを不思議に思い続けていましたが、それが彼の流儀だったのです」

Gerald Genta’s Locomotive Sketch
ジェラルド・ジェンタによるオリジナルのロコモティブのスケッチ。Courtesy Credor and Gerald Genta Heritage.

 そして1970年代の終わりに、服部の個人的な依頼を受けて、ジェンタはロコモティブのデザインを手掛けることになった。ジェンタは一般的に、非常に少ない報酬でブランドのために時計をデザインし、それをブランドに渡して好きなようにさせるのが一般的だった。イヴリン・ジェンタによれば、彼女の家には夫がデザインしたものが自宅に4300点あるというから、夫には“たくさんの子どもたち”がいたことになる。そしてそのなかには、簡単に手放してもいいと思えるほど満足していたデザインもあった。しかしロイヤル オークのような時計については、ジェンタはより深くかかわり、そのデザインが完成するまで見届けることもあった。

イヴリン・ジェンタ夫人。Courtesy Credor.

Courtesy Credor.

 ロコモティブは間違いなく後者に該当し、イヴリン・ジェンタによれば、彼は時計の発売まで関与し続けたという。彼女はまた、ロコモティブはジェラルド・ジェンタブランド以外で彼自身が名前を付けた唯一の時計であるとも語った。ロコモティブという工業的な名前は、デザインに機械的なインスピレーションを受けたことを示唆しているが、そうとは言い切れない。彼が観察した機械的なもの、例えばネジや船窓のような細かい部分からインスピレーションを得たことは確かだが、ロコモティブという名前には単なる“列車”以上の深い意味が込められていた。

Original Locomotive
1979年に製造された、オリジナルロコモティブ。Photo courtesy Credor.

「コルムやピアジェにも、ジェンタのデザインはあらゆるブランドに存在します。現在、どのブランドも彼のデザインをアーカイブから探しています。いま、ジェンタのデザインを持つことが大流行していますからね。しかし彼が嫌っていたのは、人々がジェンタにまつわる話をでっち上げることでした。いくつかの有名な時計には、本当ではない話もあります。だけどこの時計に関しては違います。彼はこの時計を愛していました。彼はいつも、どの時計が長続きするか知っていました。時々、彼は『これはベストセラーになるだろう』とか『機関車みたい』と呼んでいました」

「フランス語で言うロコモティブはもちろん、皆が知っている機械のことですが、同時に『成功を引っ張るもの』という意味もあります」とイヴリン・ジェンタ夫人は語った。「あなたは写真家ですが、もしあなたの写真がものすごく有名になったら、それはあなたの写真のロコモティブになるでしょう。その時計が完全に機械にインスパイアされたとは言えません。彼はあとから名前をつけたのです」

ジェンタの物語を牽引するロコモティブ
ロコモティブは、現代の時計デザインにおける一種のミッシングリンクである。ジェンタの作品に対する熱烈な情熱にもかかわらず、この数年間で多くの人がロコモティブについて考えたことはないだろう。しかし私が初めてオリジナルのロコモティブを見たとき、それは直ちに、以前のほかのブランドのためにデザインしたものと、のちに自分の名前を文字盤に掲げて行うデザインの橋渡しとして感じられた。まるでジェンタがこれらの大胆な機械的テーマを繰り返し探求しながら、言葉の端にある(いわば)デザインを見つけようとしていたかのようであり、それ以前の各デザインが独自のアイコンであることを証明する一方で、彼は依然として自分が“言いたい”デザインを探し続けていた。

Credor Locomotive
 これは多くのアーティストに共通する現象だと感じる。自分の心のなかにある、正確な表現を探し求めることだ。ジェラルド・ジェンタは、何よりもまずアーティストであった。自己批判的であれ自己探求的であれ、もし機会があれば私たちは自分の“芸術”を永遠に調整し続けるだろう。ロコモティブを横から見ると、それは間違いなくロイヤル オークのブレスレットのように見える。しかし少し回転させると、ジェンタが自分のブランド名でデザインした時計に共通する重要なデザイン要素が込められていることに気づく。その中央にある接続ポイントは、ジェラルド・ジェンタの“オクタゴン”ウォッチ(グランソヌリやほかの複雑時計を含む)における重要な要素だと私は考えている。

Credor Locomotive
Gerald Genta Grand Sonnerie
(ジェラルド・ジェンタの)グランソヌリ。Courtesy of Gerald Genta Heritage.

 これらのデザインのどれも、ロコモティブなしでは存在しなかった可能性が高いだけでなく、1969年に設立されたジェラルド・ジェンタブランド(ロコモティブのリリースの10年前)自体も存在しなかったかもしれない。ジェンタはロコモティブのあと、主にスティールの一体型ブレスレットスポーツウォッチのデザインから離れていったが、それには服部からの励ましもあった。

「ジェラルドはロコモティブで、これらのよりインダストリアルな外観の時計で言いたいことを言い尽くしたと思います」とイヴリン・ジェンタ夫人は語った。「彼がそのあとに望んだのは、複雑機構の探求だったと思います。それはおそらく、ピカソがある時点で彼のスタイルや使用するさまざまなメディアから解放されたときと似ています。夫にも同じようなことが起きたのだと思います。彼は非常に独特な空や太陽を特徴とする永久カレンダーを作りたがっていました。彼は6本のプロトタイプを作りましたが、それらはまだ完成しておらず、文字盤には名前もありません。それを服部さんに見せたところ、服部さんは『仕上げて持ってきてください。和光で展示したいです』と言ったのです」

Gerald Genta Perpetual Calendar
2023年にクリスティーズ開催された、“ドバイ・エディット・オークション”のロットナンバー8である、ジェラルド・ジェンタを象徴するデザイン。Photo courtesy Christie’s.

「ジェラルドは6本の時計を持って戻ってきました。そんなにお金を持っていなかったのに、金無垢の時計を6本も製作するのは大変なことでしたので、それは大きな投資でした。服部さんはそれらを和光で展示しましたが、その反応はどうだったかというと、あるスイスのブランドが服部さんに『そんなことはできない。これらの時計を展示しないでくれ』と言ったのです。服部さんは『ジェンタ、これは非常に無礼です。あなたはそれを受け入れるべきではありません。自分の名前をつけるべきです』と言いました」

 その瞬間こそが、ジェラルド・ジェンタというブランド名のもとに生まれたすべてのものの真の誕生だったと、イヴリン・ジェンタ夫人は考えている。

Credor Locomotive
 クレドール ロコモティブは、その物語とジェラルド・ジェンタおよびクレドールブランドの歴史における役割に魅了されずにはいられない。ロイヤル オークの“ジャンボ”やパテック フィリップ ノーチラスよりもやや厚めだが、この時計は間違いなく手首に快適に装着できるし、176万円(税込)という価格はそれらよりもかなり手頃である。文字盤は非常に魅力的で、ロイヤル オークやノーチラス(さらにはオーデマ ピゲの“トスカーナダイヤル”のような希少バージョン)よりも素晴らしい。ただそれはある意味、重要なことではないかもしれない。

史上最も伝説的な航空機のひとつのパーツを使用した限定版として復活する。

1970年、有名で、恐れられ、歴史に残る航空機のひとつであるSR-71 ブラックバードが大事故に見舞われた。機体番号61-7970のこの機体は、テキサス州エルパソの東約20マイルの地点で給油タンカーKC-135Q(機体番号59-1474)と衝突し、墜落したのだ。パイロットとRSO(偵察システムオフィサー)は無事に脱出したものの、SR-71自体は失われた。それ以来、バナジウムや鉄が加えられた未来的なチタン合金であるこの機体の一部が、時折市場に出回ることがある。そして今、それらの素材は時計の一部となり、ウルベルクの新作EMC SR-71のクランクハンドル(回転運動を伝えるためのハンドル)やネジ込み式ベゼルに生かされている。

Urwerk EMC
このアイデアはふたりの起業家、ジェイソン・サルコヤン(Jason Sarkoyan)氏とロマン・シュペール(Roman Sperl)博士が2020年12月にウルベルク本社を訪れたことから始まった。サルコヤン氏は時計コレクター兼デザイナーであり、EMC ブラックを着用していた。一方のシュペール博士は航空技術者であり、SR-71 ブラックバードに関する専門家であった。彼らは“ドリームランド”という会社を設立しており、大人気のフランクミュラー時計コピー Nランク代金引換プレスリリースによると、これは“宇宙探査のニーズに応える製品を開発するだけでなく、アメリカの航空宇宙の偉業を日常生活にもたらすことを目的としたライフスタイルブランド”であるらしい。彼らのプロジェクトについてそれ以上の情報は見つからなかったが、少なくともこの時計は私の目を引いた。

SR-71 Handle
SR-71の合金素材でつくられたハンドル。

ウルベルクをフォローしてきた人なら、2013年に登場したEMC(エレクトロメカニカルコントロール)のこともご存じだろう。このモデルの核心的な機能は、コントロールボードに接続された光学センサーで、テンプの2万8800振動/時(4Hz)の振動数を測定し、1600万Hzの電子オシレーターの基準と比較してどれくらい正確に動いているかチェックする仕組みである。集積回路にはその差を計算する機能があり、ケース8時位置にあるボタンを押すと10時位置のインダイヤルに時計のクロノメーター精度が表示される。そのほかパワーリザーブ、スモールセコンド(針の先端にSR-71がデザインされている)、もちろん時・分表示機能も備わっている。

ブラックバードのパーツに加えて、ケースはブラックアウトされたチタンとスティールでつくられており、防水性能は30mだ。幅47.55mm、長さ49.57mm、厚さ17.58mmと、かなり大きめの時計である。内部には自社製の手巻きEMCムーブメントが搭載されており、パワーリザーブは約80時間。時計は世界限定10本で、価格は15万スイスフラン(日本円で約2560万円)である。

我々の考え
もし“SR-71の地上スピードチェック”の話をまだ読んでいないなら、ぜひ共有したいと思う。シンプルで楽しいストーリーであり、なぜSR-71が伝説的なのかがよく分かるエピソードだ。さて、もし地上にいて“時計のスピード(精度)チェック”や振動数の確認が生じた場合は、EMCがその役目を果たすだろう。この時計はF.P.ジュルヌのエレガントと同じ時代(そして同じ年)に登場したもので、これは高級時計製造において電気と機械の融合が本格的に始まった時期でもある。EMCは2014年、ジュネーブウォッチグランプリの“メカニカル・イクセプション賞”と“イノベーション賞”部門で受賞を果たした。このモデルは基本的には同じものだが、ブラックバードの機体の一部を(たとえ小さくとも)時計に組み込んだこと自体とてもクールであり、ぜひ取り上げたいと思ったのだ。

私はウルベルクのファンだ。彼らは今の市場において、きわめてハイエンドな未来的ウォッチメイキングを象徴する存在だと思う。心のなかではヴィンテージ好きでありたいと思いつつも、ウルベルクの新作を見るたびに“もしかしたらこっちのほうが自分に合っているのかもしれない”と感じてしまう。ただ自分の判断を急ぎたくはない。数週間後にジュネーブに向かう予定のため、そのときにこの時計を直接手に取ってみたいと思う。それまではパイロットたちがよく言うように、青空を上に保っておこう(気持ちを落ち着けて待とう)。

基本情報
ブランド: ウルベルク(Urwerk)
モデル名: EMC SR-71

直径: 47.55mm
厚さ: 17.58mm
ケース素材: チタン&ステンレススティール、SR-71 ブラックバードの機体パーツでできた巻き上げクランクハンドルとベゼル
文字盤: ブラック
インデックス: プリント
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: 航空機の安全ベルトに着想を得たNATOストラップ(ナイロン、レザー製)、ベルクロ式

Urwerk EMC
テンプ上に配置された光学センサー。

ムーブメント情報
キャリバー: UR-EMC
機能: 時・分表示、センターセコンド、δパフォーマンスインジケーター(特許取得済)、パワーリザーブインジケーター、時刻調整用ネジ
パワーリザーブ: 約80時間
巻き上げ方式: 手巻き、マクソン®ジェネレーター搭載
振動数: 2万8800振動/時
追加情報: 機械式テンプに連動する光学センサーと、1600万Hzの電子オシレーター搭載

価格 & 発売時期
価格: 15万スイスフラン(日本円で約2560万円)
発売時期: すぐに
限定: あり、世界限定10本

スイスで数日過ごして感じたスイス時計業界の現状と未来

Geneva Watch Daysの怒涛の48時間を締めくくる、いわば最後のアポイントメントは、レマン湖を見下ろすパティオでビールを片手に、ドイツの若手時計師ヨハネス・カリニッヒ(Johannes Kallinich)氏とティボー・クレエ(Thibault Claeys)氏との即興ミーティングだった。この若い時計師たちはSJX Watchesを運営するスー・ジャーシャン(JX Su)氏と同席し、彼らが初めて手がけたインディペンデントウォッチ、アインザー(Einser)を見せるために私を呼んだのだ。彼らはA.ランゲ&ゾーネでキャリアをスタートさせその後独立したが、その背景の一部にはグラスヒュッテが独立系ウォッチメイキングの拠点となりうることを証明したいためでもある。

 アインザーを発表したあと、カリニッヒ・クレエは瞬く間に30本すべてを売り切った。まだあまり知られていない時計師としては見事な成果である。Geneva Watch Daysでは新作の発表はそれほど多くはなかったが、カリニッヒ・クレエはダニエル・ロートやベルネロンなどEditors’ Picksで取り上げたブランドと並んで、私が印象に残った存在のひとつだった。スーパーコピー時計 代金引換優良サイト今後数週間でさらに多くの記事を掲載する予定だ。

kallinich claeys einser watch
若き時計師カリニッヒ氏とクレエ氏による見事な仕事ぶりは目を見張るものがある。彼らはほぼすべての部品を自分たちで製造しており、とりわけムーブメントの設計が印象的だ。伝統的な4分の3プレートを採用しているが、ムーブメントの最も興味深い特徴が見えるように露出している。たとえばテンプ受けには、ランゲの元マスターエングレーバーによってエラのような模様が刻まれており、さらにヒゲゼンマイと連動するレギュレーターがテンプ受けのシェイプに沿って配置され、スワンネックに似た機能を果たしている(下図参照)。

kallinich claeys watch germany
 その一方で、スイスの時計業界は多くの報道によると苦境に立たされている。Geneva Watch Daysのあと、ブルームバーグのアンディ・ホフマン(Andy Hoffman)氏は、“スイスの高級時計メーカーは、需要減退に対応するため政府に財政支援を求めている”と書いている。ブルームバーグによると、ジラール・ペルゴとユリス・ナルダンを所有するソーウィンドグループは、従業員の約15%を短時間労働や一時帰休にするため、この国のプログラムを利用していることを初めて明らかにしたブランドである。このプログラムでは企業が一時的にシフトを削減するあいだ、政府が一時帰休中の労働者の給与の一部を負担する。最近の報道によれば、時計部品サプライヤーが多く集まるジュラ地方では、この夏に約40社がこのプログラムに申請しているという。

 カルティエ、IWC、ヴァシュロン・コンスタンタンなどのブランドを傘下に持つリシュモンのトップでさえ、自社ブランドが生産を抑制し、“ただ単に量を追求するのではなく、慎重になるべきだ”と述べている。

 これらふたつの対照的な話を、ひとつのすっきりした物語にまとめるのは難しいかもしれない。一方でまだあまり知られていないドイツの時計師ふたりでは処理しきれないほどの需要があり、また彼らのような状況にあるブランドはほかにも存在する。他方では、何世紀もの歴史を持つGPやUNといったブランドが、工場をフル稼働させるほどの需要を確保できていない。この“対照的な話”の一部こそが、どんな業界でも健全さを保つ要因である。好みは変化し、古いブランドは遅れをとったり適応できなかったりする一方で、新しいブランドがその穴を埋めるのだ。結局のところ、先に挙げた小規模なブランドの新作に熱狂し、ジラール・ペルゴのラ・エスメラルダ トゥールビヨン “シークレット” エタニティ エディション(税込6295万3000円、世界限定18本)についてはほとんど触れないのには理由があるのだ(私たちはこのモデルのターゲット層ではない)。

 中国経済の減速がこの停滞の主要な原因として挙げられている。確かに、時計業界は経済的不確実性の犠牲となっているが、Geneva Watch Daysのような時計展示会は、政治集会や高校の壮行会のようなものであり、意図的に興奮を煽り、実際の時計に焦点を当てるために設計されている。

 新作の発表はそれほど多くはなかったものの、それぞれ秋の新作発表やオークションなどに向けて準備を進めるなか、業界を盛り上げるには十分な内容だった。ここでは私がジュネーブで目にしたハイライトをいくつか紹介する。これらについては、今後数週間でさらに詳しく取り上げる予定だ。

全体のムード
aha tantalum bracelet
新設されたオルタナティブ・オロロジカル・アライアンス(Alternative Horological Alliance)のタンタル製ブレスレット。

 ほかの展示イベントに比べて、Geneva Watch Daysは緩やかで分散型の雰囲気を持っており、とくに小規模のインディペンデントブランドに焦点が当てられている(パテック、ロレックス、リシュモンなどは不参加)。実際、この独立系の精神こそが、業界全体に最も大きな活気をもたらしているのだ。

 それを最も象徴していたのは、新作発表ではなく、私が週の始めに参加したオルタナティブ・オロロジカル・アライアンスの発表だったかもしれない。これは、ミン、フレミング、J.N.シャピロが共同で立ち上げた取り組みであり、インディペンデントウォッチメイキングを“既存の枠を超えた新しい基準”に向けて推進することを目的としている。マークの説明によれば、この取り組みでは資源を共有し、伝統的な時計製造のサプライチェーンの一部を再考することも含まれている。このアライアンスの発表とともに、ミンがデザインし、シャピロが製造した印象的な新作のタンタル製ブレスレットも披露された。

 彼らの製品は常に独立性の価値を示しているが、長期的に持続可能な独立系ブランドを築くことは難しい。AHAのような取り組みが、その助けとなることを願っている。

オークション
sotheby’s treasures of time
11月に開催されるサザビーズの“トレジャー・オブ・タイム”オークションの注目ハイライト。ブレゲ数字を採用したRef.1563が目玉となっている。

 現行品の市場と同様に、オークションやセカンダリーマーケットも減速している。これは時計に限った話ではなく、サザビーズは最近、上半期の収益が大幅に減少したと報告した。大手オークションハウスは秋のシーズンが好調になることを期待しており、すでに11月のセールプレビューを行っている。

 まず最初にプレビューしたのは、サザビーズのシングルオーナーによる“トレジャー・オブ・タイム”オークションだ。11月に行われる同オークションは、パテック フィリップを中心に30本の時計が出品される。目玉はRef.1563のスプリットセコンドクロノグラフだ。現存するものはわずか3本しか確認されておらず、そのうちの1本は有名なジャズミュージシャン、デューク・エリントン(Duke Ellington)が所有していたもので、現在はパテック フィリップ ミュージアムに収蔵されている。1563はイエローゴールドケースと“タスティ・トンディ”と呼ばれるRef.1463と同じプッシャーが特徴だが、このモデルを際立たせているのはブレゲ数字である(ちなみにエリントンのモデルにはこのブレゲ数字はなかった)。このコレクターはブレゲ数字に強いこだわりを持っていたようで、Ref.130 クロノグラフや、ブラックダイヤルの2499、さらにはRef.1436のスプリットセコンドクロノグラフにもそれが見られる(しかもハードエナメルで!)。Ref.1563のスプリットセコンドクロノグラフは、推定落札価格が100万スイスフラン〜300万スイスフラン(日本円で約1億6640万~4憶9900万円)とされており、2013年に記録した150万スイスフラン(当時の相場で約1億5800万円)を超えるかどうかが注目される。近日中に詳しいプレビューをお届けする予定だ。なおサザビーズ“トレジャー・オブ・タイム”の全カタログはこちら。

fp journe second tourbillon wristwatch
ジュルヌが製作した2本目の腕時計であり、初めて販売されたトゥールビヨン・スヴラン。11月に開催されるフィリップスのリローデッド(Reloaded)オークションに出品予定だ。

 一方、フィリップスはリローデッドオークションのプレビューを行った。同オークションは1980年から1999年の時計を中心に取り扱っており、フィリップスはこの時代を“機械式時計製造の再興”と呼んでいる。ブレゲ、ブランパン、ダニエル・ロート、デレク・プラットなど、この時代を象徴する時計師たちの幅広いコレクションが揃っているが、特に注目すべきは初代ロレックス レインボー デイトナと、ジュルヌが製作した2本目の腕時計であるトゥールビヨン・スヴランだ。今年1月のマイアミアンティークショーの特集を振り返れば、リローデッドに出品されているほかの時計を思い出すかもしれない。

 私はジュルヌファンではないが、トゥールビヨン・スヴランはまさに見事な職人技の結晶だ。“クラフトマンシップ”という言葉は今ではすっかり使い古されているが、この時計にはその真の意味が込められている。素朴なダイヤルかつ手彫りで、インクが湿ったノートのように滲んでいる。レインボー デイトナは“300万スイスフラン(日本円で約4憶9900万円))を超える見積もり”だが、ジュルヌは“200万スイスフラン(日本円で約3億3260万円)を超える”見積もりとなっている。個人的には、ジュルヌのほうが響くものがある。繰り返すが、私はジュルヌファンではない! フィリップスオークションについては、今後さらに詳しく取り上げる予定だ。ちなみに、プラチナ製のデュフォー デュアリティにはまだ触れていないが、オークションのレベルが高いことはこれでお分かりいただけるだろう。オンラインカタログはこちら。

 それでは、新作時計の紹介に移ろう。

新作発表: A(アルビスホルン)からX(ジェブデ)まで
albishorn maxigraph massena lab
アルビスホルンのマキシグラフは、存在していたかもしれないヴィンテージレガッタウォッチを、遊び心たっぷりに再解釈したモデルだ。

 アルビスホルン(Albishorn)は、セリタ社のイノベーションおよびマーケティング責任者であるセバスチャン・ショルモンテ(Sébastien Chaulmontet)氏によって立ち上げられた新ブランドだ。ショルモンテ氏は筋金入りのヴィンテージクロノグラフ愛好家であり、彼のコレクションの一部を紹介する素晴らしい動画も公開されている。長年彼の存在を知っていただけに、ついに本人と直接会えたことがとてもうれしかった。

 アルビスホルンのマキシグラフはマッセナLABとのコラボレーションによって誕生し、1930年代に作られていたとしたらどのようなモダンなレガッタクロノグラフになっていたかを想像してデザインされた時計だ。デザインは見事に仕上げられており、典型的なレガッタタイマーとは一線を画す、いくつかの巧妙な技術的イノベーションが盛り込まれている。同僚のジョナサンはEditors’ Picksで、この時計をGeneva Watch Daysで最も気に入ったリリースとして挙げている。アルビスホルンからは今後も“ヴィンテージウォッチの再解釈”をテーマにしたモデルが登場する予定で、すべてがヘリテージのアイデアを遊び心いっぱいに表現している。またヴィンテージにインスパイアされたデザインが、必ずしも堅苦しいものである必要がないことも証明した。

mb&f mad 1 slim
スリム化されたM.A.D.1 S。マークのHands-Onレビューでも紹介されたモデルだ。

 1年以上ぶりにMB&Fの時計とじっくり向き合う機会を得たが、まるで動くアートのワンダーランドのようだった。レペとMB&Fのコラボ作“アルバトロス”、いわばチャイムを鳴らす飛行船型の置時計から、実際に装着可能となったM.A.D.1 Sまで、マックス・ブッサー(Max Büsser)氏の世界に足を踏み入れた瞬間から、その感覚に圧倒される。過去数十年間、彼ほど時計や置時計の目的そのものを根本から再考した人物はいないだろう。彼の作品を実際に手に取ることで、その独自性を改めて実感させられる。

 ジュネーブ中心部にあるジェブデ・レジェピ(Xhevdet Rexhepi)氏の工房は活気に満ちており、6人ほどの従業員が組み立てや仕上げのさまざまな工程に取り組んでいる。彼のアトリエの様子は、この動画で手軽に見ることができる。彼の手がけたミニット・イネルテは、インディペンデントウォッチメイキングの革新的な作品だ。秒針が毎分2秒間停止し、そのあと分針が一気に進むという仕組みで、これはスイスの鉄道時計を参考にしたものだ(実際の動作はここで確認できる)。この複雑機構を完成させるのには相当な苦労があったようだが、彼の工房ではグリーンとブルーのダイヤルを備えた実働モデルを見ることができた。

bulgari ultra thin octo finissimo
オクト フィニッシモ ウルトラは、驚くほど薄いにもかかわらず、依然として“時計”としての感覚を保っている。

bulgari ultra thin octo finissimo
…しかし、底知れぬ薄さだ。

 新作ではないが、ブルガリのオクト フィニッシモ ウルトラ COSCは、実物を見てもなおその薄さが信じがたい。わずか1.7mmだが、しっかりと時計としての感覚を保っている。“データマトリックス(ラチェット部分にあるQRコードのようなパターン)”は今でもあまり好みではないが、それ以外だと極端なオクト フィニッシモであり、それはまるでパスタローラーを何度もとおしたかのようだ。コンスタンチン・チャイキンのシンキングプロトタイプ(1.65mm)も見たかったが、彼は4月までに量産モデルを出すと約束している。今のところブルガリが依然として最薄量産時計であり、重要なのはフェラーリ×リシャール・ミルやチャイキンとは異なり巻き上げに鍵を必要としないことだ。

 “世界最薄”の称号を争う超薄型トリオのなかだと、今でもブルガリがお気に入りだ。実際の時計として見える点が大きな理由であり、しかもCOSC認定もされている! とはいえ、コンスタンチンの天才的な技術も否定できない。

berneron mirage stone dials
ベルネロン ミラージュ 34はストーンダイヤルが特徴で、このイベントの主役となった。

 今週の主役は、おそらくベルネロンのミラージュ 34だろう。昨年38mmのミラージュを発表したシルヴァン・ベルネロン(Sylvain Berneron)氏は、非対称ケースを小型化し、より小さくて薄いムーブメントを採用した。しかし最大の変化はダイヤルにある。小型化されたミラージュでは、YGのモデルにタイガーズアイのダイヤル、ホワイトゴールドにはラピスラズリのダイヤルが使われており、どちらも驚くほど美しい。タイガーズアイは1970年代のシャギーカーペットと木製パネルのようなレトロ感を漂わせ、もうひとつのラピスラズリはクールでモダンな印象を与えている。近々ベルネロン ミラージュコレクション全体のハンズオンレビューもお届けする予定だ。

daniel roth tourbillon rose gold
 最後に紹介するのは、先週のEditors’ Picksでも触れたダニエル・ロートのローズゴールドトゥールビヨンだ。これが最大のサプライズだった。リローンチされたロートのトゥールビヨンを実際に見るのは初めてだったが、想像以上に素晴らしかった。1990年代のオリジナルトゥールビヨンに加えられた改良はわずかだが、しっかりと感じ取れる。サファイア製シースルーバックをとおしてムーブメントを確認した際、まず目に留まったのはブラックポリッシュ仕上げされたテンプ受けだった。完璧に仕上げられたそのディテールは、レンダリングやプレス写真では決して伝わらない美しさだ。全体の仕上がりは温かみがあり、ギヨシェ彫りも繊細で、すべてのパーツが見事に仕上げられている。ロートの美学は完全に自分好みではないが、実際に見たあとでは客観的に見ても美しいウォッチメイキング作品だと感じた。

 業界の苦境を伝える報道が続くなかでも、ベルネロン、ロート、レジェピ、さらにはアルビスホルンのような新作を見ると、機械式時計製造の未来は依然として明るいと感じさせてくれる。

ギヨシェパターンが施されたC1 ベル カント クラシックが登場

クリストファー・ウォードは2022年にリリースされてカルト的な人気を獲得したC1 ベル カントシリーズに、4つの新たなモデルを投入した。これらのモデルはMB&Fのレガシー・マシンのようにケースの上半分が盛り上がったような立体的なドームデザインを備えており、時針が正時を指すときにソヌリ オー パッセージという機構で1時間ごとにチャイを鳴らす。今回は新たにクラシックな雰囲気を添えらダイヤルプレートが採用され、レーザーエッチングによるバーリーコーンのようなギヨシェ模様が施されている。

Christopher Ward Bel Canto Classic
Photo: courtesy Christopher Ward

価格はストラップ付きで4225ドル(日本円で約64万5000円)、口コミ第1位のリシャールミルスーパーコピー代引き専門店ブレスレット付きで4540ドル(日本円で約70万円)であることを考えれば、この時計に高級時計にまつわるフランス語の製造用語がこれだけ盛り込まれていることも納得がいくだろう(ちなみに、ギヨシェは真の手彫りではなく機械彫りであるため、ギヨシェ加工にどれだけの時間がかかるかといった長い議論は必要ない)。それでもゴールド、グリーン、シルバー、ブルーそれぞれのダイヤルに見られる美しい放射模様は12時位置にある時刻表示用のインダイヤルを中心に広がり、クラシックの名にふさわしい仕上がりとなっている。このインダイヤルにはローマ数字が採用され、クラシックな要素がさらに強調されている。

Bel Canto Classic
この時計は従来どおり41mmのケース径に厚さ13mm、48mmのラグトゥラグ、ラグ幅は22mmで、チタンケースが採用されている。正時にはクリアなD音(ドレミでいうところのレ)でチャイムが鳴り響き、これは手巻きのCal.FS01(セリタSW-200をベースとしたもの)によって駆動し、38時間のパワーリザーブを備えている。開発の詳細については過去の記事を参照するといいだろう。これらの時計は限定ではなく新たにC1のコアラインアップに加わるものである。現在注文が可能で、納品は2カ月後を予定している。価格はデプロワイヤント式のベイダークラスプ(ブランドが特許取得)付きストラップが4225ドル(日本円で約64万5000円)、チタンブレスレットが4540ドル(日本円で約70万円)だ。

我々の考え
かつて2023年1月にオリジナルのベル カントを紹介し、それまで数万から数十万ドルの価格帯でしか手に入らなかったチャイミングウォッチを手ごろな価格で提供するという点で非常に価値のある時計だと評価した。確かにこれはミニッツリピーターではなくチャイム音は少し小さめ(手元のサンプルではわずかにフラットなD6音)で、1時間に1回しか鳴らないが、それでもクリストファー・ウォードに多くのファンをもたらした時計であることに変わりはない。

手ごろな価格で手に入る機械式のチャイミングウォッチには、特筆すべき魅力がある。同モデルはリリースと同年のジュネーブ・ウォッチ・グランプリ(GPHG)の小さい針賞(Petite Aiguille)賞(8000スイスフラン以下のベストウォッチが該当する)も受賞した。しかし販売においては少し問題があった。予約金を支払った人々が生産上の問題で遅延に見舞われ続けたほか、長い待機期間の末に間違った色が届くこともあった。クリストファー・ウォードの担当者は、事態がもっとスムーズに進むことを望んでいたと話していた。そのこともあり、今回はダイヤルの変更以上の改善を行っている。

Bel Canto C1 dial
deployant Bader clasp
クリストファー・ウォードの担当者によれば、なじみの顧客には発売からわずか2カ月で時計が届く見込みで、2025年2月末までに安定的な在庫状態を維持することを目標にしているという。すべての顧客が納得するかは不明で、実現するかは今後次第だが、同社が信頼を取り戻すためのハードルを認識しているのは確かだ。

時計自体に関していえば、実は2023年のブランドとの初インタビューでこのギヨシェ模様を目にしており、当時それが検討中の一案であると伝えられていた。その後別の担当者からはこのデザインは不可能で、ブリッジやチャイム機構と組み合わせるとごちゃごちゃしすぎてしまうと言われた。私が見たものについて深く追及されないようにしていたのかもしれないが、この瞬間が来るのをずっと黙って待っていた。

Blue bel canto
ブルーのモデルが青すぎる? もう少し様子を見て欲しい。Photo: courtesy Christopher Ward

実物を見ると、この時計の視覚的な印象はまさに“しっくりくる”。発売前に画像で見たときには、ブルーとグリーンのダイヤルが少し派手すぎて、ギヨシェ模様と喧嘩するのではないかと思っていた。ところが、少なくともグリーンの場合はダイヤルパターンにトカゲのウロコのような虹色の質感が加わり、実際に目にすると色合いが柔らかく感じられる。真っ直ぐな角度から撮影された正対写真から予想していたような均一で鮮やかな印象とは異なり、ずっと落ち着いた仕上がりだ。ほかの色も同様だろうと想像するが、ブランドから提供されたライフスタイルショットではやはりブルーはもう少し落ち着かせてもいいかもしれないと感じている。

またローマ数字がこのデザインに適しているか、あるいは必要かどうかも疑問に思っている。ローマ数字はMB&Fのレガシー・マシンシリーズへのあからさまなオマージュととらえらえる可能性が高く(時計全体についても同様のことがいえるが)、来年以降はこの路線でさらに多くの試みが見られるのではないかと思っている。いずれにせよこの新モデルは、ここ数年でクリストファー・ウォードが生み出したなかでも最も成功した革新的な製品にぴったりな新たな選択肢である。

基本情報
ブランド: クリストファー・ウォード(Christopher Ward)
モデル名: C1 ベル カント クラシック(C1 Bel Canto Classic)

直径: 41mm
厚さ: 13mm
全長: 48mm
ケース素材: グレード5チタン
文字盤色: レーザーエッチングによるギヨシェパターンが施されたゴールド、グリーン、シルバー、ブルーダイヤル
インデックス: 時刻表示用のインダイヤルにローマンインデックス
夜光: なし
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: セタレザー製のストラップにはデプロワイヤント式ベイダークラスプが搭載され、22mmから16mmへとテーパーしている。またグレード2のチタン製ベイダーブレスレットも選択可能

Christopher Ward Bel Canto Classic
ムーブメント情報
キャリバー: FS01 (セリタSW200-1ベース)
機能: 時・分表示、チャイム(オン/オフ、プッシュボタン付き)
パワーリザーブ: 38時間
巻き上げ方式: 手巻き
石数: 29
クロノメーター認定: なし
追加情報: D調のチャイム(D6音)

価格 & 発売時期
価格: ストラップ付きで4225ドル(日本円で約64万5000円)、ブレスレット付きで4540ドル(日本円で約70万円)
発売時期: 発売中
限定: なし

2025新作 ロレックス

2025新作 ロレックス「オイスター パーペチュアル コスモグラフ デイトナ」「オイスター パーペチュアル GMTマスター II」「オイスター パーペチュアル スカイドゥエラー」に新しいダイアルが登場

 大胆な構成の3モデルが、カラーと素材の独創的なコンビネーションで新たな感動を呼び起こします。オイスター パーペチュアル コスモグラフ デイトナ、GMTマスター II、そしてスカイドゥエラーにそれぞれのオーラを引き立たせる新しいダイアルが登場しました。

THE BRILLIANCE OF THE UNEXPECTED

 ロレックス スーパーコピーは、洗練された技術と象徴的なデザインで知られるアイコニックな3つのモデルに鮮やかな新ダイアルを発表しました。

 モータースポーツの世界と経過時間の計測に密接なつながりのあるオイスター パーペチュアル コスモグラフ デイトナは、ブライトブラックのカウンターがアクセントの鮮やかなターコイズブルーラッカーダイアルを備えています。18 ct イエローゴールド製の新しい時計は、このモデルのアイデンテイティの核となるタキメーター入りのブラックのセラクロムベゼルを搭載し、セーフティーキャッチ付オイスターロッククラスプが装備されたオイスターフレックスブレスレットを採用しています。

 グローバルに飛び回る人々のためのコスモポリタンウォッチであるオイスター パーペチュアル GMTマスター IIには、タイガーアイアンで作られた新ダイアルが登場しました。この天然石はタイガーズアイ、レッドジャスパー、シルバーヘマタイトを含み、魅力的でハイブリッドな外観が特徴です。この18 ct エバーローズゴールド製モデルはブラウンとブラックのセラクロムベゼルインサートを搭載し、セーフティキャッチ付オイスターロッククラスプが装備されたオイスターブレスレットを備えています。

 エレガントで洗練されたオイスター パーペチュアル スカイドゥエラーは、世界中を旅する人たちにとって不可欠なパートナーです。2025年に発表されたモデルは、サンレイ仕上けのブライトグリーンダイアルを備えており、その力強い色合いは18 ct イエローゴールド製ケースを美しく引き立てます。オイスタークラスプが装備された同じく18 ct イエローゴールド製のジュビリーブレスレットが、さらに洗練された雰囲気を添えます。スーパーコピー 時計 代金引換優良サイト。

 すべてのロレックス ウォッチと同様にオイスター パーペチュアル コスモグラフ デイトナ、オイスター パーペチュアル GMTマスター II、オイスター パーペチュアル スカイドゥエラーはSuperlative Chronometer(高精度クロノメーター)認定で、手首着用時に極めて優れた性能を発揮します。

OYSTER PERPETUAL COSMOGRAPH DAYTONA
オイスター パーペチュアル コスモグラフ デイトナ
Ref:126518LN
ケース径:40.0mm
ケース厚:11.9mm
ケース素材:18 ct イエローゴールド
防水性:100m(330ft)
ブレスレット:オイスターフレックス、フレキシブルメタルブレード、高性能エラストマーコーティング、18 ct イエローゴールド製セーフティキャッチ付オイスターロッククラスプ、ロレックス グライドロック エクステンションシステム(約2.5mm単位で約15mmまで延長可能)
ムーブメント:自動巻き、Cal.4131(ロレックスによる完全自社製造)、約72時間パワーリザーブ、毎時28,800振動(4Hz)、47石
仕様:時・分表示、スモールセコンド針(6時位置)、中央の秒針によるクロノグラフ、積算計(30分/3時位置、12時間/9時位醤)、秒針停止機能による正確な時刻設定、ターコイズブルーラッカーダイアル、ブライトブラックのカウンター
価格:5,491,200円(税込予価・今春発売予定)

OYSTER PERPETUAL GMT-MASTER II
オイスター パーペチュアル GMTマスター II
Ref:126715CHNR
ケース径:40.0mm
ケース厚:11.9mm
ケース素材:18 ct エバーローズゴールド
防水性:100m(330ft)
ブレスレット:18 ct エバーローズゴールド製オイスターブレスレット(3列リンク)、18 ct エバーローズゴールド製セーフティキャッチ付オイスターロッククラスプ、イージーリンク(約5mmのエクステンションリンク)
ムーブメント:自動巻き、Cal.3285(ロレックスによる完全自社製造)、約70時間パワーリザーブ、毎時28,800振動(4Hz)、31石
仕様:時・分・秒表示、24時間針によりホームタイムを表示、瞬時に変わる日付(3時位置)、時針による日付設定、秒針停止機能による正確な時刻設定、タイガーアイアン(天然石)ダイアル
価格:7,467,900円(税込予価・今春発売予定)

OYSTER PERPETUAL SKY-DWELLER
オイスター パーペチュアル スカイドゥエラー
Ref:336938
ケース径:42.0mm
ケース厚:13.8mm
ケース素材:18 ct イエローゴールド
防水性:100m(330ft)
ブレスレット:18 ct イエローゴールド製ジュビリーブレスレット(5列リンク)、18 ct イエローゴールド製オイスタークラスプ、イージーリンク(約5mmのエクステンションリンク)
ムーブメント:自動巻き、Cal.9002(ロレックスによる完全自社製造)、約72時間パワーリザーブ、毎時28,800振動(4Hz)、45石
仕様:時・分・秒表示、24時間表示のオフ・センター ディスクによりホームタイムを表示、瞬時に変わるサロス年次カレンダー:両方向回転で素早く確実な日付設定(3時位置)、ダイアルのアワーマーカー外周の12個の小窓による月表示、秒針停止機能による正確な時刻設定、ブライトグリーンダイアル(グロス、サンレイ仕上げ)
価格:8,259,900円(税込予価・今春発売予定)